2022年4月の記事一覧

特別寄稿(菊地 一文 氏)

「時々サクッと読み返したくなる!特別支援学級・通級指導教室の授業づくりに役立つQ&A(第1版)」の完成と公開にあたって

 

 人口減少や少子化の影響により、小・中学校等に在籍する児童生徒が年々減少している中、特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受ける児童生徒は増加の傾向にあります。その数は特別支援学校に在籍する児童生徒数を大きく超えており、我が国における特別な教育の場のメインターゲットであると言えます。その一方で、文部科学省等の調査では、特別支援学級や通級指導教室を担当する教員の多くは経験年数が浅く、悩みながら指導を行っている現状であることが指摘され、大きな課題となっております。さらに、小・中学校等においては通常の学級に在籍する多様な教育的ニーズのある児童生徒への対応も喫緊の課題となっていることから、小・中学校等においては、特別支援学校のセンター的機能の活用などを含む、校内支援体制の整備と指導・支援の充実が求められているところです。

 このような学校現場が抱える課題に対して、国立特別支援教育総合研究所をはじめ、各都道府県及び政令市・中核市等の教育センターでは、学校現場で活用できる特別支援教育に関する様々なガイドブックやツール等を開発し、発信してきているところです。従前に比べ、インターネットでキーワード検索すれば、たくさんの情報が入手できる時代となったことは、大変喜ばしいことです。しかしながら、そうは言ってもなかなか必要なものを検索して入手することが難しいという現状もあるようです。

 これらの状況を鑑み、本ポータルサイトは、青森県総合学校教育センター特別支援教育課が2019年に実施した県内の特別支援学級や通級指導教室担当教員を対象とした悉皆調査の結果を踏まえ、学校現場における特別支援学級や通級指導教室担当者の生の悩みや課題を取り上げて作成したものです。アクセスしやすく、わかりやすいQ&A方式で、馴染みやすい4コマ漫画の形態をとおしてコンパクトかつ具体的に対応方策等を紹介しており、さらにはこれだけの本数をストックし充実したコンテンツは、他に例がないでしょう。特別支援学級や通級指導教室の担当教員のみならず、児童生徒に関わるより多くの方に紹介したいポータルサイトです。

 児童生徒がよりよく学ぶためには、教員自身が学びを通して資質・能力の向上を図るとともに、学びの面白さや手応えを実感しつつ、児童生徒の身に立って授業づくりを行う必要があります。コンパクトにまとめられ、短時間でアクセスできる本ポータルサイトには、そのような教員自身の学びやすさやわかりやすさがあり、学んだことを実際に実践してみることで咀嚼され、手応えを感じられるようなよさや可能性があります。

 なお、本ポータルサイトはこれで完結ではなく、利用された方が「教えてアンサーくん」にフィードバックすることによって、さらに拡充が図られていくとのこと。学校現場の先生方と共に作り上げていくという点でも魅力的であり、独自性や発展性があります。本ポータルサイトの今後の学校現場での活用と充実に期待しています。

 

弘前大学大学院教育学研究科教職実践専攻 教授 菊地 一文